「温室育ちのお坊ちゃんね」


私はそう言ったあと、窓の方へ歩き出した。


「……ま……待、て……」


撃たれた警官は必死に立とうとするが、恐らく無理だろう。


すぐに手当をすれば命の危険もない。


「一つ、教えてあげる」


私は窓に足をかけ、後ろを顔だけ振り向いた。


「私の血も赤いのよ……あんたみたいに」

ガッ


そして私は窓から飛び降りた。
ダイヤのベールを被りながら。














ガッガガガガ

『ガッ……応答しろ……何事だ!?』


トランシーバーから上司の声がした。


―――私はずっと闘ってきた。


――私の血も赤いのよ。


怪盗の言葉が頭から離れない。


「警部……すみません……ブラッディクロスを逃がしてしまいました……」


警官はそう答えた後、気を失った。