「お前はこういう風に追いかけられるのが嫌なのか?」
「嫌ってわけじゃないんだけど…なんていうかお前に悪い気がして……」
そう、申し訳ないと思ってるんだ。
俺は何もお前に返せない。
だから、心苦しい。
この胸の苦しみはそのせいなんだ。
何も反応がないから下を向いていた顔をあげる。
あげたのは、タイミングよく、水城が口を開いた瞬間だった。
「諦めるつもりなんて少しも無い」
「何で!?」
「寧ろ俺が諦めるとでも思ってたのか!?」
何も言わない俺を見て「それはそれで傷つく……」と嘆いていた。
「俺の気持ちはお前が俺のことを好きにならないからって諦められるほど、簡単なもんじゃねぇんだよ」
どう返せばいいか困っている俺に向かってまだ続ける。
「そもそもそんな簡単に諦められるなら、もうとっくのとうに諦められてる」
ははと笑った水城は自嘲的で、でも、どこか優しさが含まれていた。
そんな水城を見て胸をそっと押さえつける。
————ありえないんだよ。
この俺が胸の苦しさを覚えるなんて、
ありえないことなんだよ。
この胸の痛みは俺の気のせい……。
だから、心臓もうちょっとゆっくり動いてよ……。


