「そこ座ってると汚れるぞー」
「わかってんだよ! んなことぐらい!!!」
立ち上がりながら軽くズボンをはたく。
すると目の端々に遊具が写る。
「懐かしいな〜、これなんかもう動く気配ないや」
スプリングがついてる台座に乗って前へ後ろへ揺れるあの遊具だ。
スプリングの部分が錆びており、軋みそうにも無かった。
昔は愛嬌があったはずのパンダの顔も酸性雨の影響か溶けていて、ゾンビの如く顔と化している。
昔はみんなが笑顔になる遊具だったのに、今日じゃ恐怖しか与えないとは…。
『物の無常をかんじる…』なぁ。
もう一度ブランコに座り直す。
今度は座ったまま漕ぐ。
「立たないの?」
「立たねーよ」
含み笑いをしている水城がこの上なく腹立たしい。
漕ぎながらたまに隣を盗み見る。
水城の顔はずっと前を向いていた。
終始穏やかで、優しい顔。
「お前さっきから何なんだよ? 人の顔ばかり見て」
「気付いてた?」
「あんなに見られればな、誰でも気付く」


