「とりあえず今は駄目だ」
「今は駄目ってどういう意味だよ!?」
「そのままの意味。そうだな……とりあえず男が何を持ってるか気がついたらこの手離してやる」
俺は男を見ているので(凶器を持っている男に背を向ける馬鹿はいないという話である)華鈴の顔はわからないが、怪訝そうな顔をしているというのは空気で分かった。
俺は男の左手が見えるように少しだけ引っ張る。
そしてそれを見た華鈴が言ったのは、
「…………ナイフだな」
当たり前のことすぎた。
「よし、少しは落ち着いたか?」
華鈴の呟いた言葉が先程と違って荒々しく無かったので、確認の意を込めて尋ねかける。
するといつもの冷静で頼もしい声で「ああ」と返ってきた。
俺は小さく笑うと華鈴の手を離した。


