「あ!咲~出かけてたんだ」


「うん…ちょっと用事あってさ」


亮はふと顔をしかめて、私の服に顔を近づけた。


「どっ…どうかした?なんか付いてる?」


亮はごほっと咳をして、顔を服から離してつぶやいた。


「…タバコ臭い」


忘れてた!さっきまで…。
やばい、ばれちゃったかな…。
嫌われちゃったかな…。


「これは…」


亮は力が抜けたようにしゃがみこみ、あーっと叫んでから寝っころがった。


「亮?」


「俺、今日ほんと不安だったんだ。咲に嫌われたんじゃないかって。俺に会いたくないから学校来なかったんじゃないかって。ほんとよかった~」


泣いていた。
彼の顔に、日の光で反射する雫がつたった。


…誰が彼を泣かせた?
自分。
…誰が彼を不安にさせた?
自分。
…誰が彼を悲しませた?
自分。


私はほんとに彼の側にいていいの?


「咲。」

亮が私の手を握りしめていた。
力強くではなく、優しく。
私の手を包み込んでいた。


「…なに?」


この、温かい手にずっと包まれていたい。
でも…。


「ずっと側にいろよ」


私の頬に涙がつたった。
亮…好き。
大好きだよ。
離れたくない…。


「…うん!」