ほら、また笑った。


「うちも…」


「あ、そろそろ校長に怒られるで、またな!」


そう言って彼は走って行ってしまった。
…名前聞いてない!


「名前なにー!?」


この声届け!
お願いだから届いて!


「木村亮!」


かすかに聞こえた名前。
これから[亮]という言葉を何回言うんだろう…。

そう思った瞬間気づいた。


「私…恋してるの?」


あんなに男が怖かったのに…。
なんて簡単な女なんだろう。

優しい男がいたらもう恐怖はなくなるの?

なんて簡単な女なの…?
哀れだよ…。


「幸せってなに…?」


私は、青く澄んだ空に向かってつぶやいた。