彼方は、さらなる十和田の質問に答えたくないかのように飛び込み台の階段を降りる。
「食堂に行きましょう!
お話を聞きに行きます」
軽やかに階段を降り、今度は係員部屋まで突っ走って行った。
辻は「ええーっ」なんて悲鳴を上げている。
「すみませんね。
あいつ高校の時からああなんですよ」
疲れた雰囲気満々の二人の刑事に八部は苦笑いを浮かべながら言った。
昔から。
一度集中すると無我夢中五里霧中になる体質らしい。
集中モードに入れなかった時のテストの点は、そりゃもう最悪なものだった。
八部はかすかに浮かんできた高校時代を思い出す。
「頑張ってくださいね」
「はは…まったくです」
十和田はやれやれと溜め息をつきながら、彼方の跡を追った。