「だいたい可笑しいよな。 『湊』なんていかにも水を連想させる名前つけられておきながらカナヅチなんて」 回廊を歩きながら兄は呟いた。 「親から貰う名前なんて選べませんからね、どうも失礼しました」 「まったくだ」 容赦ない。 昔からひねくれ者なのは百も承知だけれど10歳離れた年頃の妹にこれはないだろう。 イケメン!イケメン!なんて友達に羨ましがられていた頃が懐かしい。 イケメンで優しいお兄ちゃんが欲しかったよ、私は。