「被害者は一条晴臣、58歳。 職業は大学教授。 死因は胸部刺し傷からの出血多量で、死亡推定時刻は昨夜の23時から1時の間と思われます。」 辻が手帳にメモした内容を事務的に、けれど慌てた口調混じりに読み上げた。 「双葉南の方は」 「一条氏と違い遺体の損傷が激しいため、死亡推定時刻の割り出しは難しいとのことです。 いま司法解剖へ」 「そうか」 担架に乗せて運ばれた一条の遺体に手を合わせて、彼方と十和田は室内に視線を移した。