「…なんか大変そうですね」


独り言めいた湊のセリフに、意味なく八部が「そうだね」同意した。


思わぬ修羅場を見てしまった。



五家宝の方は特に立ち去る気配はなく、再度彼方に向かってすみませんと頭を下げた。


「気にしないで。
仕事柄、ほうっておけなかっただけですから」


「いえ、本当に…。
お食事の時間に不快な思いをさせてしまいました」


「見たところ、あなたが謝ることではないです。

どうぞお気になさらず。

それより、バイキングご一緒しませんか?

お一人ではせっかくの夕飯も美味しくなくなりますから」




うわぁーと湊が眉をひそめた。

また女を引っ掛けやがって、そんな男相手にしてはいけませんよと忠告したいところではあったが。


「はい、是非!」



五家宝は瞳を輝かせて誘いに応じた。


「兄さん、詐欺容疑で逮捕されませんかね」

「奴は大変なものを盗みました…あなたの心です」

「とっつぁーんっ」



八部さんとでもコンビ組もうかな、と思い始めた湊であった。