「なんでもないねん。 こいつが…こいつがな、貧乏ゆすりが酷ーてかなわんねん。 せやから怒鳴ってもうたんや。 なあ?」 急に弱腰になったハゲの態度を見て中年はニヤリと意地悪そうに笑って「ええ」と答えた。 その返事に、ハゲは奥歯をかみしめて悔しそうな声を漏らす。 「あー、もう止めや止めや! 儂疲れたから部屋戻って休ませてもらうさかい」 ハゲはそう言って席を立った。 「先生、なら私も」 双葉も同じくして席を立つ。 ハゲはそれを制して、「ほな」と彼方に軽く会釈をして出口の方へ歩いていった。