九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】




「一条晴臣は午前1時にはすでに死んでいる筈だ!

遺体の硬直具合から鑑識が確かにそう判断した!」



「例外はあります」



掴み掛かりそうな十和田の勢いを彼方は冷静かつ無感情な声で制した。


「…弁慶の立ち往生、知っていますか。

戦いの最中立ったまま死んだとされる弁慶の立ち往生。

あれは医学的に証明可能かもしれない話なんですよ」


「な、なんだと!」



「……湊が目撃した一条さんは、トレーニングウェアを着ていました。

四井さん、一条氏は最近、早朝ランニングを好んでいたのではありませんか?

それも、朝早くに」



「え、ええ。
一条は目覚めると何時であろうがランニングに出かける習慣がありました」



「ああーっ!!わかった!」



辻が大声を上げた。

彼方がにっこり微笑んで説明を再開する。


「例外とは、『激しい運動の最中に急死する』場合。

体内のたんぱく質が多い状態であるため死後硬直がかなり早まります。」


「――…で、では」


十和田が息を飲んだ。