「ここで、犯人は暗くしていた照明を一気に明るくしました。
散瞳剤で瞳孔が開いた双葉さん。
――…さて、状況をよく考えてみましょう。
自身は今飛び込み台の上、目の前には刃物を持った犯人、逃げ場はなく、下には『プール』。
湊、お前どうする」
「………飛び込みます」
「………!」
そうか、と閃いた十和田は思わずあっと声を上げた。
「プールには本来、僅かに水が入ってたんだな。
照明が暗いときはかすかに水面が光を反射していたため、双葉にはプールに水が入っているように見えた。」
「そうです。
たとえ水位が低くとも、『犯人に襲われている』という緊急事態では判断力が鈍ったでしょう。
プールという場所には当然水が入っている。
ゆえに、逃げるために双葉さんはプールに飛び込みました。」
「でも、実際にはプールの水位は低く、双葉は床に頭を強打した」
緊張した十和田の声が、周囲の恐怖感を煽る。
プールで飛び込み台から飛ぶのに慣れているらしい双葉なら、絶対に思い付く逃げ道であった。
だからこそ、現場は『海』ではなく、彼女に絶対的な自信と暗示をもたらす『プール』だった。


