そんな深兄は毎年、
桜の咲くこの時期に帰郷する。滞在期間はその時々で違うのだが、私としてはそれは出来るなら可能な限り長く居てほしい。
…それに、丁度昨日家族で深兄がそろそろ帰って来る頃ではないか、と話していたところだったのだ。
「深~兄~」
人らしき陰が深兄だとはっきり分かったところで、私はベランダに出てそのまま声を掛けてみた。
「……??……お!ただいま~」
深兄は一瞬驚いたような顔を見せたけれど(上から声が聞こえてきたのだから当然か…)、直ぐに相変わらずの……というか全く変わっていない深兄独特の優しげな笑顔で応えてくれた。
私は深兄にもう一度手を振ってから急いで階段へと向かった。

