街で田嶋に会ってから、
2週間が経った。
が、あれ以来、特に何もなく、
平穏無事な日々が続いた。
また、倉庫に行くようにもなった。
奏と遥のケガも、もう治った。
「萌奈」
ある夜、いつものように飯を食い、
くつろいでいると、純が呼んだ。
帰る時間にはまだ早い。
なんだろう…?
そう思いながら「何?」と尋ねた。
「ちょっといいか?」
「あぁ」
それだけ言うと純は、
あたしの腕を引いて、
倉庫の外に出た。
暗い空には満月が
はっきりと見えていた。
「純?」
何も話さず歩いて行く純。
いつのまにか、バイクの前にいた。
「かぶれ」
「えっ?」
帰る…のか? もう?
「話がしたい。海へ行くぞ」
「………遠くね?」
海、って夏休みに行ったところだろ?
「近くに堤防がある」
「…………そっか」
そんなところに行くほど、
みんなに聞かれたくない話なの?
「しっかり掴まってろよ?」
「ん」
あたしはバイクにまたがり、
バイクのうしろを持った。
遥のバイクに乗ったときみたいな
掴まり方を純にするのには、
なぜか躊躇したからだった。