「………え…」
「ですから、玲はきのうで専属執事をやめたんです」


翌日。
あたしの部屋に入ってきたのは玲じゃなく、室井俊輔というおとこのこ。
やっぱりあたしと同じ高校に通うようだ。


「精一杯つとめさせていただきます。よろしくお願いしますね」
「………………」



あたしはしばらく呆然とした。
あの、優しい笑顔の玲が…
あの、いつも傍に居てくれた玲が…
専属執事を…やめた?
そんなの……そんなこと、許さない!
あたし告白の返事だってしてない。
きのう一晩中考えたんだよ。


あたしは急いで準備すると、家を出た。


「コーラっ!」
「…………!?」


あたしの目の前には室井俊輔がいた。


「…………何よ」
「凛、ここから歩いてるらしーじゃん。オレの後ろ乗ってけよ」
「………嫌」


あたしは室井俊輔を無視して歩く。


「待てって。マジ危ねーから。オマエ金持ちのお嬢様って自覚持てよ!」


室井俊輔の突然の大きな声にあたしはびっくりして振り向く。


「あ、ごめん!」


彼はあわてて謝った。
だけど瞳は心配が晴れない様子。

仕方なくあたしは室井俊輔の自転車のうしろにまたがった。


「……じゃぁ…よろしく」
「おう!ありがとな!」
「……? うん」


あたしはなぜ彼がお礼を言っているかわからずに彼の腰に捕まった。