穂高はそう言いざま、再び背を向けると、ゆっくりと欄干に向かい進んでいく。
その背中を掴み止めたい高志だったが、硬直しきった体が思うように動かないらしく、下唇を噛締めたまま双眸を強く閉じた。
「ばっかやろう」
やっと出た声は震えている。
欄干を登った穂高は、その上に背筋を伸ばして堂々と立ち上がると、大きく深呼吸をした。
そして、掌を少し開き、中にある天使の羽根を微笑みの中で見つめていた。
「高志。お前の幸せを、過去から祈ってる」
言いざま、天使の羽根を強く握り締めて胸に宛がった。
刹那、穂高の足が欄干を離れ、体がゆっくりと宙に舞い、落下していく。

