ジャラジャラとバックを掻き回しリップを取り出すと、更に丹念に塗り始める。 「それは俺じゃなくてアンタがだろ」 「……だってぇ、少しは母親らしい事したいじゃない?」 自分を見て欲しい訳ではない、それは当の昔に諦めている事だった。 だが、今現在こうして近くにいるにもかかわらず向き合って会話をしようとしない史恵に穂高は苛立った気持ちを募らせた。