天使の羽根



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 何事もなかったかのような当り前の儀式の中で、穂高の内に膨らむ悲しみなど、弔問に訪れた者は誰も気付きもしない。

 誰もがただひっそりと、今まで智子として生きてきたあずみの人生を何も知らずに偲んだだろう。

 過去を生き、この時代で年をとり、あずみは何を思ったのだろう。

 今の穂高には、まだ計り知れない事だ。

 そんなあずみの葬儀が、智子としてしめやかに執り行われてから一ヶ月近く経つ。