「穂高には……幸せになって……もらい、たい、から……行かない、で」
「……幸せだよ……お前さえいれば、何もいらない」
そう言ったなり、あずみは双眸を閉じ、短い息を繰り返す。
「あずみ、今誰かを呼んで……っ」
見る見る蒼白になるあずみを見かねて、穂高が立ち上がりコールをしようと手を伸ばした。すると、瞼を閉じたままのあずみは、その穂高の手を探る様に手繰り寄せると、力一杯に握り、引き寄せた。
「傍に、居て、ください……ずっと、ここに」
年老いたあずみの手が、穂高の手を握り締める。その皺を、穂高はそっと撫でた。
「傍にいる……あずみ」

