「お姉ちゃん! お兄ちゃん! 行かないでぇ――――っ!」 豊子の腕の中から、キヨは叫んだ。 悲痛な想いが二人の心に突き刺さるも、決して穂高は振り向かなかった。 あずみの肩を強く抱き寄せ、勢いよく欄干を蹴り出す。 そして、後ろ髪を引かれる思いを残して、穂高とあずみの体が宙を舞った。 「行かないでぇ――――っ!!」 夜の闇に、キヨの泣き叫ぶ声が木霊している。