涙に濡れて眠るキヨを見つめ、それでも穂高はまだ腰を上げる事が出来なかった。 だが。 「行きなさい」 静かな闇に溶け込むように、そう言ったのは豊子だった。 「あたしたちの事はいいから……帰りなさい。この時代に生まれた運命だと思って受け入れるよ。でも、少しでも幸せに助かる命があるのなら、あなたたち二人がこれからも生きていけるなら、別れる事も寂しくない」 「豊子さん……」 そう言って、あずみはすすり泣くしか出来なかった。穂高は、血が滲む程にギュッと唇を噛締めた。 ――ごめん。