◇ 薄暗い空に、満月が顔を出した。 「もう少しの辛抱だから」 誰にともなく呟いた穂高は、この現状から早く逃げ出したかった。 豊子とキヨは、焼けた家から離れる事はなく、一日中、同じ場所に座っているだけだった。 心配じゃないと言ったら嘘になる。だが、何もしてやる事が出来ない今、ただ帰る事だけを願って耐えていた。 そして、ようやく夜がきたのだ。