豊子は、智子が「大事なものがある」と言って家に引き返した事を知らない。その声は今にも潰れてしまいそうなほどにしゃがれていた。 智子が無事でいてくれる事を願うばかりだ。 必死に這いつくばりながらでも誰もが自分の家族を探している。すすり泣く声が聞こえる。 穂高にもたれて、あずみとキヨが疲れた表情を浮かべ、瞼を閉じていた。 そんな二人を、穂高は今一度、確かめるように抱き竦めた。 唇の震えが止められない。 やがて漏れる嗚咽に、穂高は抑えきれない悔しさが重なっていった。