アパートに戻った健吾は、テレビも付けずにずっと考えた。

 僕はどうしたいんだろう──

「深刻に悩むほどのものじゃない」ってベリルさんは言ってくれたけど、普通の人間が知ったからといって得をするような事柄でもないって事だよな。

 もうこの際、それがどうでもいいような内容でも聞くのが怖い気がしてきた。

 それほどに、あの2人の雰囲気と自分とでは大きな隔たりがあると感じたのだ。

 僕には到底、あの中に入れる勇気も力もない。そう思うと、

「なんか、悔しい」

 きっとこれは、どんなものにでも言える悔しさなんだろう。そこに自分はいないという孤独感というのか疎外感というのか、妙な空虚感が心を襲う。

 それを埋めようとするのか、そのままスルーを決め込むのか──ひと晩中、健吾は悩んだ。