「……」

 知りたい──でも怖い。

 触れた事の無い世界にじっとりと足を踏み入れ、さらに深みにはまる先に目を凝らそうとしてしまう。

 踏み出そうとする足を一歩進ませれば、知りたい世界が見える。

「もう少し……考えたいです」

「そうか」

 やはり起伏のない声がかけられた。

 見捨てられた訳でもなく、相手の感情を尊重した返答だと充分に理解はしていても、どことなく物足りない寂しさが健吾の心を通り過ぎていった。