「!」

 アパートの入り口に自転車が止められていて、健吾は目を丸くする。

 向こうに置いてきてしまった自転車だ。

 わざわざ取りに行ってくれたのか、親切な泥棒だなぁ。

 これからはもう都心まで自転車を走らせなくていいと思うと、少しホッとした。

 真夏に自転車で1時間以上もかけて都心まで走るのは、正直こりごりしている。