「イエナ」

「い、いい名前だね」

 彼女の歩み寄りで、多少落ち着いたのか、詰まらせていた喉から声を絞り出す。

「率直に訊くけど、君が怪盗? ニュースでやってる」

「疑っているのか」

 中性的な声からつむがれた言葉に、少しドキリとした。

「解らない……です。だから、確かめたくてっ」

 真剣な面持ちの健吾に、彼女は合わせていた視線を外して再度、溜息を漏らしたあと、青年へと戻した瞳と共に口を開いた。