「……天使のエメラルド?」

「見てみな」

 健吾に見えるように宝石を向けた。

 目をこらさなくても見える、そのインクルージョン(鉱物などに入っている液体や小さな結晶などの総称)は、まるで一対の翼のように形作られていた。

「知ってるか? ルシファーの冠にはエメラルドがはめ込まれていたんだそうだ」

「!」

 大天使ミカエルとの闘いでエメラルドは冠から外れ、地面に叩きつけられた。

 それから、エメラルドのほとんどには不純物が入って出てくると謂われている。

「最も美しいとされているルシファーの冠に収められていたんだ、神が愛した宝石なんだろうな」

 つぶやくように発して目を細めた。