部屋に戻ると機材は一切合切、持ち去られていて健吾は唖然としていたが、健吾が相手側に拘束されたと解った時点でこうなることは2人とも解っていたらしく、さして驚く様子はなかった。

「約束は守ってくれたまへよ」

「また連絡する」

 撤収作業を終えて真木邸をあとにし、ベリルたちは借りているホテルに戻った──

 フロントがベリルに何か手渡しているのを横目に見つつ、健吾はエレベータに滑り込んだ。

 エレベータから出て、健吾はベリルの手に収められている黒いスウェードの巾着をちらりと見やる。

 大きくも小さくも無い、なめらかな生地で出来た袋は丁寧に扱われているように感じられた。