明日もバイトだ、歯を磨いて寝よう……小さく溜息を吐くと洗面所に向かう。このアパートだけは幸運だった。

 トイレと風呂はセパレートだし、家賃もさほど高くない。

 リビングと台所が続きにはなっているが、快適だった。

 時々、隣で深夜に妖しい男女の声が聞こえてくる以外は、いたって平和そのもの。

 独り身にはわびしい声だけどね。と、肩を落として布団に潜り込む。

 暗闇で天井を見つめた──その口元が、だらしなく緩んでいく。

 もちろん、考えていたのは今日、出会った女性のことだ。

「また会えないかな」

 そうつぶやいて意識を遠ざけた。