同時刻──暗めのスーツを着た男が、高級住宅街を歩いていた。

鋭い眼差しはどこを見るでもないようなそれでいて、何かを探しているようにあちこちに向けられる。

「!」

 そんな男の視界に2階の窓に影が映し出され、それにひどく反応した。

 そして電柱の影に身を潜め、無線を取り出す。

「見つけました。はい、奴を逃がした時に見た男です」

 通話を終え、その人影に険しい目を向けた。