「自由に使ってくれたまへ」

 50代ほどの男性は、突き出た腹を揺らして自慢げに口を開く。

「痛み入ります」

 おおよそ似つかわしくない言葉遣いで応える泉に、健吾はぽかんとした。

「モデルの兼だがよろしく頼むよ」

「解っている」

 起伏のない声で返し、作業を続ける。それを確認して男は去っていった。

「ホントにモデルするんですか?」

「問題はない」

 大きめのデスクの上にディスプレイが3つほど並べられ、キーボードと見慣れない機械がその前に並べられる。