午後12時を少し回ったところ──

「……」

 健吾は、目の前に広がる部屋に呆然とした。

「入り口で突っ立ってんな~」

 機材を運び込む泉の後に、ベリルが続いて入る。

「よく借りられたよね」

「ベリルにかかればこんなもんだ」

「誤解を招く言い方はよせ」

 そうかな、誤解でもない気がするんだけど……コトの経緯を聞いたら、確かに彼じゃないと借りられなかったと思う。

 こんな高級住宅街にマンションやアパートなどあるはずもなく、ベリルはどうしたものかと思案しつつ歩いていると、この家の住人に声をかけられたそうだ。