「あ」

「え?」

 女性がつぶやいて見た先に視線を移す。

「? 何かあ……ああっ!? いない!?」

 こんな手に引っかかるなんて!

 落胆しながらも、手にあるサイフを見つめて彼女のことを思い起こした。

「……いい香りだったな」

 自然と口元がニヤリと吊り上がる。