確かに、それほどにベリルには何か魅力的な部分がある事は健吾もよく解ってはいるがそれでも同じ男に欲情を覚えるほど飢えてはいない。

 飢えてない……と心の中で何度も言い聞かせ、ベリルに視線を移した。

「……」

 そこはかとなく醸(かも)し出される上品な立ち居振る舞いと整った顔立ちに一瞬、クラリ……ときそうになり頭を数回、振って我に返る。

 なんだってこの人は、こんなにも自然に尊大なんだ。

 現実にいる人とは思えないけど、目の前にいるしな……なんて思っていた処で、刺さるような視線に気がつくと案の定、泉が静かに睨み付けていた。

 心の中で謝りながら視線を外す。