「ねえ、テレビ見た? またあの怪盗が出たって」

「あー! 見た見た!」

「カッコイイよねぇ~」

「……」

 何がカッコイイというんだろう……女子高生たちの会話を耳にしながら1人の青年が横をかすめて通り過ぎる。

 大体、怪盗なんて俗名で警察では番号で呼ばれるんだ。

 ただの泥棒に何をトキメいてるんだか……などと思いつつ、辺りを見回し歩く。

 もうしばらくすれば、太陽の光が都心に建ち並ぶビルの壁や窓ガラスをオレンジに染めていくだろう。