「だから、この完璧な密室状態での犯行を理論的に説明するには、超能力しか無いのよ」

それを聞いて琢磨は徐に椅子から立ち上がると、つかつかっと亜矢子の前に進み出て、彼女の額に無言で右手を当てた。

「熱なんか無いわよ失礼ね……」

「――あのな、亜矢子……密室殺人のトリックが、実は超能力でしたなんて言うのは、ギャグにもならんぞ」

「あら、じゃぁ、琢磨、それ以外の方法で、この殺人事件を理論的に説明する方法を言って見せてよ。いい、人間、柔軟な発想力が大切なのよ。何事も否定せずに受け入れる、それが人類の進歩を助けて来た事くらい、理解してほしい物だわ」

一気にまくしたてる亜矢子の額から手を離し、椅子では無くて机にどっかりと腰を下ろすと、自分のこめかみを押さえながら吐き出す様にこう言った。

「それじゃぁ、何でも有りだろうが……いいか、何か見落としてるんだ、手品のタネみたいなもんだ」

「あら、この図に書いた通りで、犯行現場のの間取りは単純明快、逆に見落とす事が有る事の方が奇跡的だわ」

「だから、それじゃぁ何でも有りだろうが。密室殺人のトリックが超能力でしたなんて言う推理小説が有ったら、その作者は文壇から永久追放になるぞ」

亜矢子は両手を腰に当てて仁王立ち。

「じゃぁ、説明して見せてよ、理論的に現実的なトリックとやらを」