「ちょっと待てよ。行くって何処行く気だ?」

何処に行くのかは何となく想像がついたのだが念の為ぶっきらぼうにそう尋ねて見た。それを聞いた亜矢子は意外な事を口走る奴だなと言わんばかりの目つきで琢磨を見上げると、全く躊躇う事無くさらっと、一言こういってのけたのである。

「理事長室に決まってるじゃない」

「あのな、理事長室は未だ規制線が張られてる。中には入れん。現場保存は捜査の最重要課題だ。そんなところに入った事がばれたら、何を言われるか分らんぞ。それに余計な勘繰りをされるのも困る」

その言葉に亜矢子は悪魔の笑みで答える。

「ばれなきゃいいのよ」

琢磨の予想通りの答えが返ってきた。あまりにも予想取りだったので大きく溜息をついて肩をすくめて見せた。

「なにやってんの、早くしなさい」

「へえへえ……」