「なによ、そんな面白くない事出来る訳ないでしょ。私はね、いつかこんな事が自分の身に降りかかって来るんじゃないかって言う予感みたいのが有ったの。だから、数多(あまた)のミステリー小説を読み漁ってこの日の為に、準備を続けて来たのよ。分らないの、それ位の事!!」

『わかるか!!』 と言うのが琢磨の正直な感想だった。

「そして、ついに起こったこのシチュエーション。密室殺人事件よ、ホントに起こるのね、こんな事。私、感動さえ覚えるわ。人生に感謝しなけりゃね」

喜々とした瞳で訴える亜矢子の瞳に琢磨は返す言葉を失っていた。

「やっぱり、図面だけ見ても実感湧かないわね」

亜矢子の言葉に『はい?』と言う表情を作るしか無かった琢磨は亜矢子の言葉の真意に気付いた時には遅かった。

「行くわよ。直接現場を見に行きましょう。事件解決には現場百辺よ」

そう言って、乱暴にパイプ椅子を後ろにはねとばしながら立ち上がると、部室の出口に向かって、すたすたと歩き出した。