「ちょっと奈良坂、遅い! 早く栞のとこ行って、村上先輩を黙らせてよ!」 ドアの外に出てくるなり、菊地は俺に八つ当たりしてくる。 なんで、俺が怒られなきゃならないんだよ。 でも、思ったとおり、栞の横にいるのが村上先輩らしい。 「アイツ、なにしゃべってんだよ?」 「内容はたいしたことじゃないのよ、今日の演奏は素晴らしかったとかなんとか。 ただ、なんか知らないけど、もう栞のことを自分の彼女みたいに言うから、聞いててムカムカしちゃって!」 「彼女みたいに?」 どういうことだ?