「すいませーん、森さんいますか?」 カウンターに座っている図書委員の女の子に、大輔くんが声をかける。 「ちょっと待ってください」と、その子はカウンターの奥にある準備室に入っていった。 今日の図書室は、利用者も少なく、静かだ。 待つ間もなく、女の子と一緒に、司書の森さんが準備室から出てきた。 「あぁ、栞ちゃんも一緒だったの? えーと、奈良坂くんよね? 私になにかご用?」 森さんはにこやかに、私と大輔くんの顔を交互に見た。