《申し出はありがたいけど、俺は、親父の国に留学する気はないよ》 俺がそう答えると、ジャンは悲しそうに眉を寄せた。 《そうおっしゃらず、せめて、パンフレットをご覧になるだけでも。 なにとぞ、一度、ご検討を》 うわー、参ったな。 親父の執事とはいえ、ジャンは、俺よりずっと年上。 たぶん、もうそろそろ60歳ってとこだろう。 そんな人に、こんな風に頼まれたら、邪険にできねぇよ。 《じゃぁ、見るだけ見ておくよ》 俺がパンフレットを手に取ると、ジャンはうれしそうに微笑んだ。