店に入り、じいさんにあいさつする。
「ひどい雨だね。」
 じいさんはちらりとこちらを見たが、何も言わず、俺の朝食作りに取り掛かる。思春期の子供の方が、もう少し愛想がいい。しかし、しゃべりすぎよりは何もしゃべらない方がましだ。
 窓際の席に腰掛け、窓の外の降りしきる雨を見て、雨について少し考えた。なぜ、雨はばらばらに細かく降るのか、直系1mくらいの塊で落ちてきたら、まるで空襲だな。そんなような事を。

 時間に余裕がある日は、ついでにコーヒーも飲んでいく。大体暇だから、大抵コーヒーを飲むことになる。

 その日も、降りしきる雨を眺めながら、コーヒーを啜り煙草をふかしていた。客は僕一人だけ。久しぶりの雨だったので、少し気分がいい気がした。だが、洗濯はできないし、ベトベトするし、外へ出ると濡れる。よくよく考えるといい事なんか何もなかった。少し気分がよく感じたのは、久しぶりの雨が最悪な毎日を変えてくれるかもしれないと思ったからか。それとも、ただちょうどいいタイミングで雨が降ったからか。
 そんな事を考えていたら、コーヒーを飲み終えてしまったので、3本目の煙草をもみ消して店を出た。