「いってらっしゃーい」
母さんは一度も俺の顔を見なかったぐらいテレビに夢中。
あー、それにしてもあの菓子パンうまかった。
今まで食ってきた中で1、2位を争うな…。
いやぁ、あんなうまい菓子パンがこの世にあったとは…
なんて100円玉が2つあれば買える菓子パンに感動していると
「…い゙っ!」
背中に痛みがはしり、脳内で組み立てていた菓子パンランキングが崩れ落ちる。
「よっ、柚木」
急に重いと感じた右肩には俺と同じジャージを着た腕が置かれていた。
左肩にも置かれている右にいる奴とは違う腕。
「…ちっ」
できる限り舌打ちを大きくし両肩にある腕を振り払う。
おちつけおちつけ、と右からの脳天気な声と同時に
後ろから聞こえてくる足音を俺は聞き逃さなかった。
「…このやろう!」
左足を軸に体の向きを変え回し蹴り。
空手経験者の俺には慣れた動作。
