「―――何か来るよ」


「うん」


「何だ何だ?」




暗闇の奥からバサバサと鳥が羽ばたく音が聞こえる。


まるで――そう。


烏天狗の鷹が空に飛び立つような。




「うわっ!!」


「きゃっ!!」




その時、何の前触れもなく一陣の風が廊下を凄い速さで吹いた。


そして、その中を何か大きなものが飛び去った。




「今のは何だ?」




嵐かと思う程の風がやみ、みんなは閉じていた目を開けた。


すでに先程の大きな影は消えている。




「分からない。

―――沖田さん、ありがとう」


「どういたしまして」




奏が風に煽られて壁に叩きつけられようとしていたのを、ちょうど戻ってきた沖田が体を支えたのだ。


だが、背中から腰に回した手をなかなか離そうとしない。




「君、そろそろ離さないとその指一本ずつ斬り落とすよ?」


「珠樹、やめて。

沖田さん、もう離して下さい?」


『えぇ〜?』




もう認めちゃいなよ。


実は仲がいいですって。




奏は珠樹の刀の柄を右手で押さえ、左手で沖田の手を引き剥がしにかかった。