奏の心に深い闇が巣食い始めていた。
黒く、濃く、着々と。
「奏」
そんな時だった。
泣きたくなるくらい懐かしく、だがもうこの世にはいない存在。
両親の声が奏の耳に滑り込んできたのは。
「……父様?…母様?」
「奏」
「奏、こちらにいらっしゃい」
「父様!!母様!!」
奏は二人に抱きついた。
滅多に甘えることのない奏が、唯一何の照らいもなく甘えられる。
あの日の記憶と共に心の奥底に閉まった両親との思い出が、奏にポタポタと涙を流させた。
「奏、私の可愛い可愛い奏」
「お前を愛しているよ?」
「父様、母様……。私、私……」
「もういい。何も言わなくていい」
「辛かったでしょう?もう泣かないで?」
記憶の中でやってもらっていたように、奏は父に頭を撫でてもらった。
母に背中をさすってもらった。
会いたかった。
ずっと。
ずっと。



