「……私、は、ミエ様のお側にいた…」
「命令です」
ミエが跳ねるのを止め、一言、たった一言で奏の心臓を鷲掴みにした。
それは近藤達だけでなく、奏やエリオルですら聞いたことが稀な程低い声だった。
「これでいいかしら?」
「……………御意」
奏が唯一膝を曲げると決めた主。
ミエの背に向かって膝を曲げ、片手を胸元に当てた。
すぐに腰を上げ、珠樹と沖田の方を振り返った。
「沖田さん、珠樹。先に行っててくれる?私、ちょっと寄る所があるから」
「うん」
「分かった」
奏はゆっくりと歩いて行った。
今、どんな顔をしているんだろうか。
奏のことだ、命令と言われたからには、たとえどんなに嫌でも実行しなければいけないと思い詰めるだろう。
そんな悲壮な決意をされてまで、欲しい気持ちなどないというのに。
「………………」
「………羨ましかったのよ、本当は」
ミエがポツリと口を開いた。
グズグズと鼻をすする音もしてきた。



