「ほら、顔をあげなさい。あづさ、そこにある化粧落とし取って」
「これ?はい」
「はいはい。男共は目をふさぐ。……目だけだからね?口と鼻はふさいじゃ駄目」
沖田と珠樹が両手を動かしたのを見て、奏は慌てて止めた。
「ちょっ!!」
「な、なに!!?」
「何って決まってるでしょうが。化粧直しよ、化粧直し。ほら、口閉じる!!」
奏は今度は二人一気にやり始めた。
もともと両利きなので、まったく問題なく手は動いていく。
いきなり顎を掴まれて、顔を上げさせられた二人は、ただなされるがままだった。
「響?」
「…っ!!鈴…さん」
響の背後に音もなく鈴が近寄り、声をかけると、響は肩をびくりと揺らした。
ゆっくり振り向くと、鈴は寸の間息を止めた。
「おおっ!!似合ってるじゃねぇか!!な?」
「だな!!このこのー」
藤堂が面白がって鈴の脇腹をこづくが、全く反応なし。
石のように固まってしまっている。
これはもう、惚れ直した的なあれだろうか。
そうに違いない。
奏はその様子をちらりと横目で見た後、何も言わずに作業を続けた。



