そして、辿り着いた奏のアパート。
入社して2年の彼のお給料は、家賃やらガス代やら水道代やら、そして家族への仕送りでほとんど消える。
だから、家賃と比例して決して住みやすいアパートではない。
だけど、ここは思い出の倉庫だ。
そして、あたしのけじめに釘を刺すのに必要な場所。
駐車場に奏の車が無いのを確認して、階段で彼の住んでる302号室に向かう。
久しぶりに目にした"徳井"のルームプレートは、何も変わっていなかった。
上下の鍵を、ガチャガチャ開けて。
無人の部屋にお邪魔する。
「…………うわ…」
足を踏み入れて、絶句した。

